南へ(この夏の記録)。

ブログを始めたのは、この事務所の独立を機にサイトを立ち上げたとき、サイトを作成してくれたT氏が、「コンテンツないからさあ、ブログでもやれば?」と言い放ったからである。ええ、すいません。どうせコンテンツもないからね。それで、ブログをやることにした訳だ。今更だったのだが。

で、悩んだのだ。ブログに何を書くか。
弁理士は客の秘密を扱う職業である以上、仕事の詳細をおおっぴらにすることはできないから、そんなスレスレのところで曖昧なことを書いても面白味はないし。他の弁理士様は法律論や判例研究をブログにまとめていらっしゃって、それは物凄い偉業だと思うけれども、私のキャラではないのは明らかだし、絶対無理だ。

で、旅の話だけをするつもりで始めた。ここには仕事の話がほとんどないので、いや、こいつは一体何をしとるのだと極稀にご心配されることもあるのだが、大丈夫です。ええ、今のところは。

旅の話をする。

物心ついたときから旅が好きだった。生まれて初めての海外は中学2年生。教室の後ろの壁に貼ってあったホームステイの募集を見て、なぜか心を鷲掴みにされたので、すぐに応募した。そのときはシンガポールで2週間。他の選択肢は米国、英国、インドネシアだったことを考えると、その頃から一貫性があった。今だったら迷わずインドネシアやけどな。

大学生のときは、タイ、マレーシア、インド、ネパール、それからラオスをリュック一つで回ったが、旅よりも音楽の方に精力を傾けていたので、そこまで気合の入ったバックパッカーではなかった。長くても1ヶ月みたいな。休学して長旅も考えたが、あれよあれよと言う間に身の回りが慌ただしくなり、気付いたら就職、転職、独立となり、今に至る。

むしろ、就職した後の方が少ない休みを有効活用しようと必死に考えるので、旅の深みは増したかもしれない。昔みたいに目的を決めず、ふらふらと街から街へと渡りあるくような旅はできないが、普段の仕事で抑圧されている分、解放感が半端ないし、だらだらと1箇所に滞在することがないので新鮮味がある。本当に、休ませていただいていることに感謝ですよ。そのぶん普段は夜遅くまで酷使されているので勘弁していただきたく。

さて、海外への飛び出しとは別に、最近、自転車(貰い物)がすっかり気に入っている。大阪から海岸線をひた走ろうと決意をしたのが2年前で、3~4日ずつ西へ西へと向かい、前回の春の連休は別府までたどり着いた。この夏は別府から南へ、鹿児島まで向かった3泊4日の旅。そのうち続きを書く。

アラブの革命の時代に少しだけ考える。

ビルマで年を越し1月4日に帰って来てから、鬼のように目まぐるしく変わる仕事の状況に翻弄されまくり、それ以外のこと全てを置き去りにする日々が続いている。が、ここしばらくAl Jazeer English: Live Streamから目を離すことができない。

http://english.aljazeera.net/watch_now/

カタールのテレビ局の英語放送を簡単にインターネット経由で閲覧できる時代にいることを喜ぶと同時に、モニタの奥で繰り広げられる光景と現在の自分の立ち位置の違いに頭が痛む。モニタの向こう側に映し出される夜のカイロは、恐ろしい数の群衆と、投げつけられる火炎瓶と、街中を走る戦車があり、パソコンの小さなスピーカーを通して、怒号と歓声と、たまに銃声が聞こえてくる。反大統領側の人々の緊迫したインタビュー、少し焦り気味のレポーター、我が国の牧歌的なニュース番組とは異なり、事の重大さがひしひしと伝わって来る。

では、「重大な事」って果たして何なんだっけ?

所謂アラブ諸国は、混乱真っ只中のチュニジア、エジプト、イエメンだけでなく、シリアやヨルダン、モロッコ、イランにしても、非民主主義的なプロセスで政権が選ばれているのは間違いない。アラブの国を旅していると(と言っても、モロッコとシリアとイランくらいしか行ったことはないが)、外国人である私に自国の政権批判は普通にしてくるし、イランに至っては「アメリカ大好きだー」と目を輝かせて語ってくるし、彼等の現在いる状況に対して不満が相当溜まっているのは凄く伝わる。それを肌身に感じてきたから、他人事とは思えずにAl Jazeeraから目を離せない自分がいる。

一方、民主主義的なプロセスで政権が選ばれれば全てが解決する訳ではもちろんないし、それは我が国を見ればよくわかる。我々も、彼等と同じく不満が相当溜まっていていいはずだ。

もう少し一般化してみる。民主化か独裁か、果ては親米か反米か、という二択で語られる問題ではない。そもそも、国家という枠組に縛られる必要があるのか、というところまで遡って考えるにはいい機会かもしれない。と、国家資格で細々と飯を食っているくせに、みっともなくほざいている私。

とにかく、アラブの人々に権力と平和を。平和になったら、すぐに彼等に会いに行こう。ああ、今夜もAl Jazeeraに目が釘付けで、仕事が全くはかどらない。

http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=906