近況と、キューバで出会った光景

ここしばらく何をしていたかと言えば、年度末~年度始の山のような書類提出〆切に追われていたこともあって、ここを更新するどころではなかったというのもあり、さらに震災と原発事故の情報を追いかけるのに必死だったというのもある。旅のことだけ書いて、アクセス数稼げればいいやと軽い気持ちで立ち上げたブログだけれども、少なくともお気楽に旅行記について書くような精神状態ではなかった。震災直後は仕事も手に着かず、ustreamやニコ生で東電の記者会見を追いかけて、少しでも本当のことに近付こうと躍起になっていた。これは、仕事が遅れた言い訳であり、関係者の方々ご迷惑をおかけしました。ええ、もう大丈夫です。いつものように、毎日毎日泥のように働いていますよ。写真は、年末に行ったビルマ、Baganでの最高の一枚。

さて、で、なんで、このタイミングでブログを更新しようかと思ったかというと、ゴールデンウィークの逃亡先となったキューバにて、そこで遭遇した光景が、いやもう素晴らしかったからである。さあ、これがキューバ版サウンドデモだ!

5月1日のメーデーは社会主義を標榜するキューバでは盛大に祝う。ちょうどその時、Sandiago de Cubaというキューバ東部の都市にいたのだが、ここはキューバ革命発祥の地であり(モンカダやシエラマエストラ等、キューバ革命好きにはお馴染みの地名はこの周辺にある)、尚且つ、黒人奴隷が大事にしてきたアフリカ文化が根強く残る。

あくまでLonely Planetを読む限りでは、同じメーデーでも、首都ハバナの方は、軍事パレードもありつつ整然としたものだと思っていた。たいして期待していなかったのだが、行ってみたらこの勢いで、真夜中から翌日の昼まで踊り狂う老若男女。キューバ各地でこんなことが起こっているのが、Santiago de Cubaだけ特別なのかはわからないが、いろんな人から話を聞く限りでは後者のようだ。これは、本当に運が良かった。

この独特のリズムは「コンガ」と呼ばれるもので、キューバ東部が発祥の地。楽器の「コンガ」は、それが誤って定着したものらしい。トラックの荷台には30名以上の楽器隊が「コンガ」を奏で、それを追いかけて踊り、歌い、騒ぐ。メッセージは様々だが、フィデル・カストロの人気は凄かった。イランに行っても、ビルマに行っても、必ず現体制の批判をする人達と出会ったが、ここではラウール・カストロへの文句は耳にしても、フィデルに対しては賞賛ばかり。50年間愛され続ける指導者というのは世界的に稀だと思う。

いや、もちろん、これはキューバの現体制に守られたお祭りなので、この国でのそれと単純比較ができないことはよくわかっている。世界的にみれば圧倒的マイノリティであるという事情はあるにせよ。でも、心の底から楽しみながら、社会を動かすメッセージを発信することが日常となっていることは、この国は見習わなければならないと思う。

奴らに対して積もり積もった怒りは、しっかりと表明する。行動しないことは黙認することと同じ。でも、せっかく貴重な休みの日に街に出る訳だから、精一杯楽しみましょう。さっきの動画に比べればハードルは山ほどあるかもしれないが、思い思いの音楽や言葉を持ち寄って。

大阪では、6月5日に南堀江公園からスタートするサウンドデモ、6月11日には中之島からスタートする大規模な御堂筋デモ。楽しみにしています。晴れてくれ。

Anti Nukes Sound Demo(6月5日)http://osaka-antinukes.tumblr.com/

大阪御堂筋デモ(6月11日)http://www.kyudan.com/osaka/index.htm

旅行記は、また気が向いたときに書くつもりです。

イラン、おまけ。

相対性理論については、別にここでの説明が不要な程に、いろいろなところ(主にネット界隈)で盛んに議論されているので、今更深く掘り下げるつもりは毛頭ない。個人的には、狙い過ぎな歌詞が、個人的にドンピシャであったのと(四角革命とか、バーモントキッスとかが、革命を目指した時代への捻じ曲げられた愛であるとか)、まあ、要するに単純に音楽として非常に品質が良いため、好んでよく聞いている。

ところで、カシャーンからアブヤーネへのタクシーの車中、お菓子をご馳走になりすっかり打ち解けたドライバーが日本の歌を聴きたいと言ってきた。そのとき手持ちのデジタルプレーヤーに入っていた日本の曲は、トクマルシューゴと、じゃがたらと、相対性理論の「シンクロニシティーン」。その中から1曲選べと言われれば、まあ、この曲しかないだろうということで、私のヘッドフォンを運転席の奴の頭に付けて「パラレルワールド」再生してみた。イントロのキックからノリノリのドライバー。

そして、

サビの「パラレルパラレルパラレルパラレルパラレルパラレルワ~」でスイッチが入り、歌い出す。ろくに英語すらしゃべれないイラン人タクシードライバーが歌う相対性理論の「パラレルワールド」。音楽が国境を越えた瞬間、しかもそれが相対性理論。シュールだ、しかし。しかし、車内は大盛り上がり。

次の日、アブヤーネの現実を知った後でホテルまで迎えに来てもらったときにも、「ハラレルハラレルハラレルワ~」と、繰り返しの回数を若干間違った状態で嬉しそうに歌っていた。おそらく彼は、「パラレルワールド」が日本人なら誰でも知っている有名曲だと思い込んでいることだろう。今後、彼が拾った客で日本人だと見れば、ドヤ顔で相対性理論らしきメロディーを歌い出すだろう。そんな胡散臭いドライバーがいれば、仕込んでしまったのは私です。相対性理論を知っている日本人、しかもイランに来るバックパッカーともなれば、ほとんど該当しないよねえ。

ドヤ顔で歌い出したものの、キョトンとする日本人を見て悲しむ彼の顔を想像すると、ちょっとだけ切ない気持になってくる。いやいや、実際、いい奴だったので、もし彼のタクシーに乗るヒトがいれば、優しく取り扱ってあげていただけることを切に願う。

アラブの革命の時代に少しだけ考える。

ビルマで年を越し1月4日に帰って来てから、鬼のように目まぐるしく変わる仕事の状況に翻弄されまくり、それ以外のこと全てを置き去りにする日々が続いている。が、ここしばらくAl Jazeer English: Live Streamから目を離すことができない。

http://english.aljazeera.net/watch_now/

カタールのテレビ局の英語放送を簡単にインターネット経由で閲覧できる時代にいることを喜ぶと同時に、モニタの奥で繰り広げられる光景と現在の自分の立ち位置の違いに頭が痛む。モニタの向こう側に映し出される夜のカイロは、恐ろしい数の群衆と、投げつけられる火炎瓶と、街中を走る戦車があり、パソコンの小さなスピーカーを通して、怒号と歓声と、たまに銃声が聞こえてくる。反大統領側の人々の緊迫したインタビュー、少し焦り気味のレポーター、我が国の牧歌的なニュース番組とは異なり、事の重大さがひしひしと伝わって来る。

では、「重大な事」って果たして何なんだっけ?

所謂アラブ諸国は、混乱真っ只中のチュニジア、エジプト、イエメンだけでなく、シリアやヨルダン、モロッコ、イランにしても、非民主主義的なプロセスで政権が選ばれているのは間違いない。アラブの国を旅していると(と言っても、モロッコとシリアとイランくらいしか行ったことはないが)、外国人である私に自国の政権批判は普通にしてくるし、イランに至っては「アメリカ大好きだー」と目を輝かせて語ってくるし、彼等の現在いる状況に対して不満が相当溜まっているのは凄く伝わる。それを肌身に感じてきたから、他人事とは思えずにAl Jazeeraから目を離せない自分がいる。

一方、民主主義的なプロセスで政権が選ばれれば全てが解決する訳ではもちろんないし、それは我が国を見ればよくわかる。我々も、彼等と同じく不満が相当溜まっていていいはずだ。

もう少し一般化してみる。民主化か独裁か、果ては親米か反米か、という二択で語られる問題ではない。そもそも、国家という枠組に縛られる必要があるのか、というところまで遡って考えるにはいい機会かもしれない。と、国家資格で細々と飯を食っているくせに、みっともなくほざいている私。

とにかく、アラブの人々に権力と平和を。平和になったら、すぐに彼等に会いに行こう。ああ、今夜もAl Jazeeraに目が釘付けで、仕事が全くはかどらない。

http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=906

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